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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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世界規模での栄養に向けて、鉄と亜鉛の供給源としての小麦の質の向上

Date: 2019-05-30 (Thu)

世界規模での栄養に向けて、鉄と亜鉛の供給源としての小麦の質の向上

Improving wheat as a source of iron and zinc for global nutrition
J. Balk, J. M. Connorton, Y. Wan, A. Lovegrove, K. L. Moore, C. Uauy, P. A. Sharp, and P. R. Shewry

(要旨)
小麦は温帯諸国の主要穀物であるが、発展途上国では慣行的な穀物から取って変わりつつあり次第にその消費量が増加している
しかし、小麦の鉄や亜鉛は生物利用性が典型的に低く、このことが小麦を主食としている国ではこれらの微量要素欠乏に寄与している。

小麦の可吸性鉄と亜鉛含量が低い理由は2つある:一つは
最も多く消費される白い小麦粉でのこれらのミネラルが低いことである。二つ目はぬか部分でのフィチン体の存在である。

これまでに亜鉛含量の高い小麦は従来の育種法(生物的強化法)で育成されてきたが、この方法は鉄に関してはうまくいっていない。

しかし、小麦やその他の穀物では、よく知られている遺伝子改変法(; GM)によって、胚乳のでんぷん質をミネラルの ”シンク”に変化させることによって精白粉の鉄と亜鉛の含量を増やすことができる。

このような戦略は最近では大衆受けがしないが、発育種子の鉄と亜鉛の輸送と沈着をコントロールするメカニズムの理解に寄与し、自然誘発性の遺伝子変異を利用して同様の効果を達成させることを可能にするかもしれない。

従来法の育種と革新的な選別技術を融合して小麦の成分を精白粉から全粒粉の間の金属の生物利用性を高めることができるかもしれない。

下図の説明.小麦種子における鉄と亜鉛の局在。(a)小麦種子の縦断面。胚芽(Em)、でんぷん質の胚乳(ES)、アレウロン層(Al)、溝(gr)とふすま、鉄の局在(上図のイメージのプルッシャンブルー染色による薄い青色)、亜鉛の局在(下図のイメージのデイチゾン染色による赤色)。(b)小麦種子の縦断面と横断面の蛍光X線像による鉄と亜鉛のHeat map表示。(c)未熟小麦種子のアレウロン層のNanoSIMS イメージ。56Fe16O−が フィチン顆粒に 局在している(このフィチン顆粒の同定は31P16O− image図による)。白色は高いシグナル強度を示している。

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