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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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酸化ストレスによって引き起こされる根の成長抑制はセルサイクル関連遺伝子の発現によってコントロールされている

Date: 2019-05-17 (Fri)

酸化ストレスによって引き起こされる根の成長抑制はセルサイクル関連遺伝子の発現によってコントロールされている

Defective root growth triggered by oxidative stress is controlled through the expression of cell cycle-related genes
Hironaka Tsukagoshi
Plant Science 197 (2012) 30– 39

a b s t r a c t
(要旨)
好気的生物では活性酸素種(ROS)は多くの作用を有している。
高濃度のROSは植物細胞に対してネガテイブな打撃を与え、老化と細胞死に導く。
環境とストレスによってROSは細胞に集積するが、それが外的刺激への細胞応答を誘起することになる。
過剰なROSのネガテイブな打撃から細胞を保護するために、植物はまたROSのレベルを正常レベルに維持するようにROSを解毒するシステムを有している。
ROSの水準の制御は、ROSが重要なシグナル分子として遺伝子発現を制御することによって植物の成長を制御しているので、特に重要である。
ROSがシシグナルとして機能的に重要であるにもかかわらず、ROSを媒介した遺伝子発現制御に関わる分子機構はわずかにしか明らかにされていない。
そこで本研究では、ROSの一種である過酸化水素(H2O2)のセルサイクル関連遺伝子の発現への影響について調べた。
アラビドプシスの根端の生長域のマイクロダイセクション(microdissected sections)を遺伝子発現分析するとH2O2はセルサイクル関連遺伝子群の発現に影響を与えていた。


それに加えて、ROSを消去する酵素群がH2O2によって誘導された根の成長の表現型に対して重要な役割を演じていることがわかった。
特に、H2O2による根の生育阻害がアラビドプシスのパーオキシダーゼの過剰発現形質転換体では低減されており、カタラーゼ2(cat2)変異体では増加していた。
cat2変異体がH2O2処理によって強く根の生育を阻害されたので酸化ストレス存在下では根の生長点活性を維持するためにはCAT2が本質的な役割を果たしていると考えられた。
結論として、以上の事からROSはストレス関連化合物としてばかりでなく、根の先端のセルサイクルの進展の制御のシグナル分子としても作用していることが確認された。