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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ピーナッツにおけるAhFRDL1経由のクエン酸分泌は鉄欠乏とアルミニウムストレスへの適応に貢献する

Date: 2019-04-06 (Sat)

ピーナッツにおけるAhFRDL1経由のクエン酸分泌は鉄欠乏とアルミニウムストレスへの適応に貢献する

AhFRDL1-mediated citrate secretion contributes to adaptation to iron deficiency and aluminum stress in peanuts
Wei Qiu, Nanqi Wang, Jing Dai, Tianqi Wang, Leon V. Kochian, Jiping Liu andYuanmei Zuo

Journal of Experimental Botany, erz089, https://doi.org/10.1093/jxb/erz089
Published:
02 March 2019
  
(要旨)
クエン酸トランスポーターは「鉄の体内輸送」と「アルミニウム耐性」に関係しているにもかかわらずこれまでこの二つの生物学的作用については、どのトランスポーターも鉄吸収Strategy-Iを有する植物種において言及されていない。
この研究ではピーナッツ(Arachis hypogaea)のクエン酸トランスポーターであるAhFRDL1について、それが鉄欠乏やAl(アルミニウム)ストレスで誘導され、根から地上部への鉄の輸送とAl耐性に関係していることを示す。
AhFRDL1の遺伝子は鉄欠乏処理では根の中心柱で発現し、Alストレスでは根の先端の全横断面で発現していた。
AhFRDL1を過剰発現するとAtfrd3 変異株が効率的な鉄の移行に復帰し、AtMATE-knockout 変異株では Al抵抗性を回復した。
根におけるAhFRDL1のノックダウン株は導管中のクエン酸含量を減少させ、若い葉での活性鉄含量を低下させた。
さらにAhFRDL1-ノックダウン株はクエン酸の根からの分泌量を低下させ、Al毒性により感受性になった。
Al感受性品種に比べて、Fe-efficient 品種におけるAhFRDL1発現促進は、クエン酸の分泌によって高いレベルでのAl耐性と鉄の移行に貢献した。
これらの事はAhFRDL1が鉄の移行とAl耐性に対してFe-efficient なピーナッツの品種において、異なる土壌ストレス条件下で有意義な役割を果たしていることを示している。
この2つの生物的作用をまとめると、AhFRDL1遺伝子は、高い鉄利用性とAl耐性品種の選抜に向けての有用な遺伝子マーカーとして貢献しうると考えられる。

photo
AhFRDL1による根圏Al耐性とFeの体内移行促進のメカニズム摸式図