WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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植物における鉄感知と鉄シグナルカスケードの複雑性を解釈する   

Date: 2019-03-15 (Fri)

以下は石川県立大学小林高範教授による、現下のすざまじいスピードで発展を遂げつつある「植物の鉄栄養研究」の最新の総説です。非常に明快にまとめられていると思います。Plant Cell Physiology 編集部によって既にAcceptされているので出版前にネットで公開されていますが、後に、多少修正が入るかもしれません。
   
   
植物における鉄感知と鉄シグナルカスケードの複雑性を解釈する
Understanding the Complexity of Iron Sensing and Signaling Cascades in Plants

Takanori Kobayashi
Plant and Cell Physiology, pcz038, https://doi.org/10.1093/pcp/pcz038

(要約)
鉄欠乏条件下では植物は鉄吸収と移行に関わる一連の遺伝子を誘導する。
鉄欠乏に対するこのような応答は転写因子群による転写ネットワークと、ユビキチンライゲースによる主要な因子のタンパクレベルでの修飾によっている。
いくつかのbHLH転写因子やHRZユビキチンライゲースはイネ科植物とそれ以外の植物で保存されている。
他の調節因子例えばイネ科のIDEF1とIDEF2や、イネ科以外の植物のFIT/FER とMYB10/72は特異的である。

IMA/FEPペプチドは広域の植物種で鉄欠乏応答を正に制御しているが、そのメカニズムは不明である。
HRZ/BTS や IDEF1など主要な制御因子と鉄やその他の金属が直接結合することが細胞内鉄センシングやシグナル伝達の原因と思われる。
さらに、FITやIDEF1などの主要な転写因子は、植物ホルモン類、酸化ストレス、金属含量などのシグナル伝達に関わる多様なタンパクと相互作用している。
であるから、FITやIDEF1は植物の環境シグナルを統括して鉄欠乏応答を調節している中枢(ハブ)の役割をしているのだろう。
局在的な鉄シグナル伝達に加うるに、根での鉄応答は、地上部由来の長距離輸送シグナルが恐らく師管輸送可能な鉄、鉄キレート、IMA/FEPペプチドなどによっても伝達されている。

© The Author(s) 2019. Published by Oxford University Press on behalf of Japanese Society of Plant Physiologists.
  
下図1,2の解説
  
図1.簡略化した植物の鉄欠乏誘導性遺伝子の制御ネットワーク
卵型は転写因子;半円形の長方型は他の制御因子ら。
二重線の転写因子らは鉄欠乏で転写レベルで誘導される。
色刷りの制御因子はイネ科と非イネ科両者で保存されている。
黒線は転写制御;赤線はタンパクレベルでの制御(2方向の矢印はヘテロダイマー形成などを含むタンパクータンパク相互作用);青線は未知のタイプの制御機構。点線は仮定の代謝過程
   
図2。鉄欠乏誘導性遺伝子制御ネットワークを制御する仮定のハブと、環境インプット因子らを簡略化した図
(A)IDEF1の相互作用。
(B)FITの相互作用。
卵型は転写因子;半円形長方型はその他の調節因子。二重線の調節因子は鉄欠乏条件下での転写レベルで誘導される。黒線は転写制御;赤線はタンパクレベルでの制御(2方向矢印はヘテロダイマー形成を意味している);青線は未知のタイプの制御。点線は仮定の経路。

ET, ethylene; GA, gibberellin; H2O2, hydrogen peroxide; JAs, jasmonates; NO, nitric oxide.

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