WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
転載希望時は連絡先まで

植物の液胞膜の鉄トランスポーターVIT1の結晶構造

Date: 2019-02-21 (Thu)

植物の液胞膜の鉄トランスポーターVIT1の結晶構造

Crystal structure of plant vacuolar iron
transporter VIT1

Takafumi Kato , Kaoru Kumazaki1, Miki Wada, Reiya Taniguchi, Takanori Nakane ,
Keitaro Yamashita , Kunio Hirata, Ryuichiro Ishitani, Koichi Ito , Tomohiro Nishizawa and
Osamu Nureki

Nature plants https://doi.org/10.1038/s41477-019-0367-2s://doi.org/10.1038/s41477-019-0367-2
   
(要旨)
生命のいくつかの酵素反応、DNA複製、酸素輸送、呼吸や光合成の電子伝達に、鉄は必須の因子であるが、鉄の過剰集積は細胞内酸化ストレスを惹起する。
  
液胞の鉄トランスポーター1(VIT1)は細胞質の2価鉄イオンを液胞に輸送することによって植物の鉄ホメオスタシスに重要である。
 
VIT1遺伝子の改良は作物の鉄含量を高めて、人類の鉄欠乏症に対処できる。さらに、マラリアを発生するマラリア原虫PlasmodiumのVIT1は抗マラリア薬の可能性のあるターゲットと考えられている。
  
ここに、我々は、ローズガム Eucalyptus grandis の、たぶんFe2+とほかの遷移金属イオンを通す、プロトン(H+)依存性のアンチポーターである VIT1 の結晶構造について報告する。

VIT1は5つの膜貫通ドメインを有する新しいタンパクである。二量体の境界のイオンが通過する通路にはメチオニンとカルボキシル基を保存している。

2の膜貫通ヘリックスは脂質層から40A突出しており、3つのヘリカル鎖と結合しており、3角形の細胞質ドメインを形成し、基質である金属イオンと結合し、その可溶性形態を安定化し、その輸送に必須の役割を果たしている。
  
このような作用機作の考察は、今後の遺伝子改変植物
や、抗マラリヤ薬の開発をデザインするのに、有用な情報を提供する事となるだろう。


photo
膜の横断面のモデル

photo
膜の横断面のモデル

photo
細胞質側から見たモデル