鉄の種子への栄養器官からの再転流には「オートファジー」の機構が必須である
アラビドプシスにおける鉄の種子への転流にはオートファジーが必須である
Autophagy is essential for optimal translocation of iron to
seeds in Arabidopsis
Mathieu Pottier, Jean Dumont, Celine Masclaux-Daubresse, and Sebastien Thomine
Journal of Experimental Botany
doi:10.1093/jxb/ery388 Advance Access Publication 4 November 2018
(要旨)
微量必須元素の欠乏は世界人口の大きな部分に影響を与えている。
新規に根から吸収される部分と葉から転流される部分が種子への養分の供給源と考えられる。
これまでの研究から、養分のリサイクルに関する進化的に保存されたメカニズムとしての「オートファジー」が種子への窒素の再転流に関係していることが明らかにされている。
そこで、我々は微量元素の種子への移行に関するこのオートファジーの役割について検討した。
我々はオートファジーを欠損したアラビドプシスでは栄養の再転流が悪化していることを見出した。
オートファジーが完璧に欠損しているatg5-1変異株では鉄の栄養器官から種子への鉄の転流が種子形成期に根から鉄を与えても劇的に減少することが分かった。
atg5-1 変異とsid2変異を組み合わせて、老化を早めかつオートファジー欠損にした変異株に、57Feをパルスラベルした実験結果から、次のような提案をしたい。すなわち、種子形成時に根から吸収された鉄はまず栄養器官に運ばれ、しかるのちに種子に再転流される、と。
最後に、亜鉛やマンガンの種子への移行もオートファジーに依存していることがわかった。種子形成時のオートファジーを微調整して種子への微量元素の再転流を向上させる可能性が出てきたというべきであろう。
57Feの移行率(再転流した鉄の移行率)。栄養成長期に57Feでパルス標識した。57Fe/(57Fe葉+57Fe茎+57Fe種子)。各5本平均。
解明されたアラビドプシスの生殖成長時の鉄の転流模式図