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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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カテコール系クマリン(fraxetin)の鉄溶解力活性について

Date: 2018-11-28 (Wed)

高pH下での鉄欠乏に応答するアラビドプシスの根に集積し、分泌されるクマリン誘導体および他のクマリン類について
  
    
Accumulation and Secretion of Coumarinolignans and other Coumarins in Arabidopsis thaliana Roots in Response to Iron Deficiency at High pH
FrontiersinPlantScience|www.frontiersin.org 3 November 2016|Volume7|Article1711
Patricia Sisó-Terraza, Adrián Luis-Villarroya, Pierre Fourcroy, Jean-François Briat, Anunciación Abadía, Frédéric Gaymard, Javier Abadía and Ana Álvarez-Fernández
  
   
(要旨)
   
アラビドプシスの高pH下の鉄欠乏耐性に関しては近年クマリン系フェノールタイプの化合物が根から分泌されることと関係があることが報告されている。
   
従来の研究ではいくつかの簡単なクマリン化合物が鉄欠乏のアラビドプシスの根とその分泌物に同定されていたが、ほかの未知のフェノール性化合物も存在する可能性が残されていた。
   
そこで我々はHPLC-UV/VIS/ESI-MS(TOF), HPLC/ESI-MS(ion trap) , HPLC/ESI-MS(Q-TOF)などの手法を用いて、鉄欠乏のアラビドプシスの根中か、または水耕液への根からの分泌物中にあるフェノールタイプの化合物を同定し定量した。
   
鉄ありと鉄なしの条件で水耕液のpHを5.5と7.5の2種類を用いることによって一連の有意なフェノール性化合物を得ることができた。
   
それらは以前には報告がなかったクマリン誘導体(cleomiscosins A, B, C, and D and the 50-hydroxycleomiscosins A and/or B) と、クマリン前駆体
(ferulic acid and coniferyl and sinapyl aldehydes)と、以前から報告があったカテコール系クマリン(fraxetin)と非カテコール系クマリン(scopoletin, isofraxidin and fraxinol)である。そのいくつかは以前には(鉄キレート能などの)性質が決まっていなかった。
   
水耕液のpHが高まって植物が鉄イオンに接する機会が少なくなり体内鉄含量が低下するにつれて、フェノール性酸の生産と分泌が強化された。
   
4種の糖鎖クマリン(aglycons)と6単糖クマリン(hexosides)は根で豊富であるが分泌液中にはaglycone類しか定量できなかった。
   
この研究でクマリンの包括的な定量が行われた結果、カテコール系クマリンのfraxetinが高pH 下での鉄欠乏アラビドプシスの主要な分泌物である(ただし根の中ではそうではない)ことがわかった。
   
またfraxetinがpH5.5でもpH 7.5でも酸化鉄(Fe(III)-oxide)から効率的に鉄を可溶化できることが分かった。
   
一方、非カテコール系のクマリンは鉄の可溶化能がはるかに低く濃度も低かったので、これらが鉄の可溶化に貢献しているとは考えられない。
   
生産されたクマリンを並べて構造を比較すると、いくつかのものは土壌中での鉄の可溶化に関係しているが、他の
ものはアレロパシー効果の方が優先すると思われる。
   

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