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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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bHLH型転写因子POPEYEはアラビドプシスの鉄欠乏応答を制御する

Date: 2018-11-16 (Fri)

bHLH型転写因子POPEYEはアラビドプシスの鉄欠乏応答を制御する

The bHLH Transcription Factor POPEYE Regulates Response
to Iron Deficiency in Arabidopsis Roots
Terri A. Long, Hironaka Tsukagoshi, Wolfgang Busch, Brett Lahner, David E. Salt, and Philip N. Benfeya

(要旨)
世界人口の増加や気候の変化に対応するためには、植物の例えば鉄のような栄養素の獲得やその後の同化過程についてよりよく把握することが非常に重要である。

cell type–specific transcriptional profiling法を用いて、内鞘に特異的な鉄欠乏応答があることと、この応答にとって重要な役割を有すると思われるbHLH型転写因子POPEYE (PYE)を同定した。

PYEのFunctional analysis の結果、この遺伝子は鉄欠乏条件下で植物の成長と発達を正に制御することが示唆された。

Chromatin immunoprecipitation-on-chip 分析と transcriptional profiling の結果、PYEは既知の鉄ホメオスタシス遺伝子や他の転写や成長やストレス応答かかわる遺伝子群の発現を制御することによって、鉄ホメオスタシスの維持に貢献していることが明らかになった。

PYEはPYEホモログである、金属イオンのホメオスタシスに関わるもう一つのbHLH転写因子 IAA–Leu Resistant3 (ILR3)とも相互作用する。

さらにこのILR3は鉄欠乏応答を負に制御している第3のタンパクBRUTUS (BTS) (これは金属イオン結合ドメインとDNA結合ドメインを持つ)仮称E3 ligase タンパクと相互作用する。
PYEとBTSの遺伝子発現は緊密に共制御されている。

低鉄栄養条件下での植物の鉄ホメオスタシスの維持にはPYE, PYEホモログ、BTS三者間の相互作用が重要であるということを提唱する。


(下図の説明鉄)

欠乏処理4日目の根端細胞の各部位でのPYE遺伝子の発現をGFP蛍光(青色)で観察したもの。
(1)分裂域、伸長域、成熟域。(2)初期成熟域。(3)後期成熟域。(4)初期成熟域の横断面。Ep:表皮、 c:皮相、e:内皮 p:内鞘。バーの長さは50 mm

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