WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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植物のデフェンシンタンパクの作用機序:鉄との関係

Date: 2018-11-14 (Wed)

アラビドプシスのデフェンシン遺伝子(AtPDF1.1)は鉄を囲い込む防御機構でPectobacterium 0carotovorum subsp. Carotovorum に抵抗を実現する 


The Arabidopsis defensin gene, , mediates defence against Pectobacterium0carotovorum subsp. Carotovorum via an iron-withholding defence System

Pao-Yuan Hsiao, Chiu-Ping Cheng, Kah Wee Koh & Ming-Tsair Chan

Scientifiv Reports online23 August 2017
(要旨)

植物のデフェンシン(PDFs)はシステイン残基が多いペプチドで病原性カビに対する抵抗性を含む広範囲の生物活性を持っている。しかし、バクテリアに対する抵抗作用に関しての知見は少ない。そこで我々はアラビドプシスの PLANT DEFENSIN TYPE 1.1 (AtPDF1.1)遺伝子が分泌性タンパクであり、細胞外(アポプラスト)の鉄をキレートすることを示した。
AtPDF1.1の転写産物は、宿主の壊死を食う寄生バクテリアであるPectobacterium carotovorum subsp. carotovorum (Pcc)によってアラビドプシスの非感染葉全体でも、感染された葉全体においても誘導される。
形質転換体アラビドプシスでは、正確に細胞内に局在するAtPDF1.1遺伝子の発現レベルが Pcc に対する抵抗性と正の相関があるので、この遺伝子はこの寄生バクテリアに対する抵抗性に関与していると考えられた。
鉄ホメオスタシスまたは鉄欠乏関連遺伝子群とホルモンシグナルとの関連を遺伝子発現分析すると、細胞外(アポプラスト)AtPDF1.1タンパクの過剰発現による鉄の局在化の促進は、葉の鉄のホメオスタシスに揺らぎを与え、その結果、エチレンシグナル経路を通じて、根における鉄欠乏由来の応答を活性化させる。
これが葉全体におけるエチレンシグナルの引き金を引き、これが宿主の壊死を食う寄生バクテリアの感染を(免疫応答)抑制することになる。
これらの知見は、植物のデエフェンシンの主要な作用が、鉄欠乏伝達系の抵抗反応によって Pccの感染を制限することであるという新しい見解を提供するものである。
 
(下図の説明)


植物起源のAtPDF1.1-遺伝子が仲介する、Pcc感染に対して植物が防御的に応答するモデルの提唱。
Pcc菌の感染期間中に、AtPDF1.1遺伝子は局所的な感染葉と全身的な非感染葉でともにアップレギュレーションされる。AtPDF1.1 タンパクの生産はアポプラストでの鉄の利用性を(デフェンシンの持つ)キレート化によって制限し、植物の体内鉄ホメオスタシスに揺らぎを与える。その結果、葉での鉄欠乏応答を活性化し、根でのエチレン合成とそのシグナル伝達経路を活性化する。これが翻って葉におけるジャスモン酸/エチレン由来の免疫応答を引き起こし、この細胞壊死を誘起する感染源Pccに対して感染耐性を高めるのである。














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