WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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地上部から地下部へ移行するペプチド(CEPD1)は窒素(N)獲得の全身的な制御に関与している。

Date: 2018-10-26 (Fri)

地上部から地下部へ移行するペプチドは窒素(N)獲得の全身的な制御に関与している。


Shoot-to-root mobile polypeptides involved in
systemic regulation of nitrogen acquisition
Yuri Ohkubo†, Mina Tanaka†, Ryo Tabata, Mari Ogawa-Ohnishi and Yoshikatsu Matsubayashi*
   
NATURE PLANTS 3, 17029 (2017) | DOI: 10.1038/nplants.2017.29 | www.nature.com/natureplants
   
   
(要約)
植物は窒素(N)を根から主として硝酸態で吸収する。しかし硝酸は自然の土壌では時として不均質に存在している。したがって、植物は片方の根がN欠乏しているというシグナルを送り、もう片方のNが十分である根に対してそれを補償するようにN吸収を誘導する。
 
この全身的なN獲得応答反応は根から根から地上部へ移行するペプチドホルモンであるC-TERMINALLY ENCODED PEPTIDE (CEP)によって引き金を引かれるが、これはN欠乏根に由来する。
   
しかし、地上部から根に下方移行するシグナルは不明であった。
   
そこで我々は、根から来たCEPを感じて葉で誘導される師管に特異的なペプチド類が下方への長距離輸送シグナルであり各々の根に運ばれるシグナルであることを示す。
   
この地上部由来のCEP DOWNSTREAM 1 (CEPD1) とCEPD2と名付けたペプチドは、硝酸が根圏に存在するときに根での硝酸トランスポーター遺伝子NRT2.1を特異的にアップレギュレートする。
   
この(シグナル伝達)経路を欠損したアラビドプシスは全身的なN獲得反応を失い各種のN欠乏症状を示す。
   
以上のような基本的な機構の洞察は、植物における全体的な栄養獲得反応を理解する上での「概念の枠組み」を提供するものであると確信する。


以下は本文の最後の部分の要約です。

以上、われわれが明らかにしてきた、窒素(N)要求の全身的なシグナルの分子メカニズムの全貌は以下のようになる。

1) 局所的な根の窒素欠乏部位でアップレギュレイトされたCEPファミリーペプチドは導管移行する地上部への窒素要求性シグナルとして働く。

2) CEPは葉の導管に集積し、たぶん蒸散流に伴って師管に拡散導入される。

3) 師管細胞の表層にあるCEPRによってCEPが認識され、CEPDポリペプタイドが生産され、これが師管流動性の下方移行シグナルとしてそれぞれの根に向かう。CEPR遺伝子発現は窒素欠乏によって促進されるので、CEPDポリぺプチドが植物の全体的な窒素欠乏状態と協働することを助けることになる。

4) 地上部由来のCEPDポリペプチドは特に根圏に窒素が存在するときにNRT2.1遺伝子発現をアップレギュレートし、植物全体の中での局所的なN欠乏を補償する。




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