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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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イネでは、エチレンは鉄獲得関連伝子群の発現を制御することによって「鉄ホメオスタシス」の制御に関係している

Date: 2018-10-04 (Thu)

イネでは、エチレンは鉄獲得関連伝子群の発現を制御することによって「鉄ホメオスタシス」の制御に関係している

Ethylene is involved in the regulation of iron homeostasis by regulating the expression of iron-acquisition-related genes in Oryza sativa
Jiaojiao Wu, Chuang Wang, Luqing Zheng, Lu Wang, Yunlong Chen, James Whelan and
Huixia Shou
Journal of Experimental Botany, Vol. 62, No. 2, pp. 667–674, 2011 doi:10.1093/jxb/erq301

(要旨)
植物は土壌から鉄を獲得するために2つの異なる戦略を採用している。StrategyII植物以外のStrategyI植物は鉄供給が制限された条件ではエチレン生産を引き起こし、これが鉄欠乏応答を制御する。

イネ(Oryza sativa)は鉄吸収のためには古典的なStrategyIIシステムを有しているのだが、StrategyI様のシステムも有している唯一のイネ科植物である。
 
鉄制限条件下で栽培するとイネの根は有意にエチレンを生成する。そればかりでなく、エチレン生合成の前駆体である1-aminocyclopropane-1-carboxylic acid (ACC)でイネを処理すると体内での鉄の利用性が向上して鉄欠乏耐性になる。
イネの、鉄で制御されたbHLH型転写因子OsIRO2、 ニコチアナミン合成酵素遺伝子 1 and 2 (NAS1 と NAS2)、 yellow-stripe like transporter 15(YSL15) 、そして鉄で制御されたtransporter (IRT1)等々の遺伝子発現を分析すると、エチレンはFe (II)イオンと Fe (III)-phytosiderophoreの吸収システムの転写産物量を増加させた。
 
OsIRO2のRNA干渉したイネでは、エチレンはこの転写因子を通じてOsNAS1, OsNAS2, OsYSL15, and OsIRT1を活性化していた. これに対してオオムギ(Hordeum vulgare)ではエチレンの生成や、エチレンが媒介する鉄応答反応はなかった。
   
結論として、イネでは、鉄制限条件下ではエチレン生産とシグナルが増加するが、これはStrategyII植物での新奇な知見である。


Key words: Ethylene, gene expression, iron homeostasis, rice, signalling pathway.

(下図の説明)
鉄十分条件下と鉄欠乏条件下でイネ幼苗にエチレン生合成前駆体であるACCを1M濃度で水耕液処理し10日栽培したた時の生理的応答。SPAD値は葉緑素計の値。*は0.05%有意差。



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