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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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仮称の新規ペプチドFEP1はアラビドプシスの鉄欠乏応答を制御する

Date: 2018-09-20 (Thu)

仮称のペプチドFEP1はアラビドプシスで鉄欠乏応答を制御する

The Putative Peptide Gene FEP1 Regulates Iron Deficiency Response in Arabidopsis

Takashi Hirayama1, Gui Jie Lei, Naoki Yamaji, Naoki Nakagawa and Jian Feng Ma

Plant Cell Physiol. 59: 1–14(2018) doi:10.1093/pcp/pcy145

(要旨)

鉄はすべての生物に必須の元素であり、植物は鉄獲得と鉄鉄の体内ホメオスタシスのために洗練された機構を発達させている。

我々はアラビドプシスがのABAに超感受性変異株であるaba hypersensitive germination2-1 (ahg2-1)が、鉄欠乏応答性遺伝子群の発現を増加していることを見出した。

ahg2-1変異株は野生株よりも低いヘムレベルを示した。さらに遺伝子発現データからはこの変異株では短いポリペプチドをコードする新規の遺伝子が強く発現していることが明らかになった。

この遺伝群の一つであるFE-UPTAKE-INDUCING PEPTIDE 1 (FEP1)となづけた遺伝子は鉄欠乏下で発現が誘導され、葉と根の維管束で観察され、また葉肉細胞でも観察された。

特筆すべきはFEP1遺伝子への挿入や欠失変異は地上部での鉄集積を低下させたが根での鉄含量は正常であった。人為的にFEP1を発現誘導させた場合には鉄欠乏応答性遺伝子であるbasic HELIX–LOOP–HELIX 38 (bHLH38),  bHLH39, IRON-REGULATED TRANSPORTER1 (IRT1)と FERRIC REDUCTION OXIDASE2(FRO2)が十分に誘導され植物に鉄集積が起こった。

さらに分析するとFEP1RNAではなく、これが翻訳されたペプチドがこれらの活性に寄与していることがわかった。際立っているのは、FEP1によるbHLH39の活性化は、鉄欠乏応答に関してのキーになる転写因子である
FER-LIKE IRON DEFICIENCY INDUCED (FIT)とは独立の現象であるということである。

以上をまとめると、結論としてFEP1はアラビドプシスでこれまで記載されてきた鉄獲得制御機構とは異なる機構で鉄ホメオスタシスの作用を有しているということである。

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アラビドプシスの鉄欠乏応答制御ペプチドFEP1,FEP2,FEP3のアミノ酸配列