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-植物鉄栄養研究会-


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イネ科由来肥料 不作地に実りを 愛知製鋼 量産化目指す

Date: 2018-08-26 (Sun)

イネ科由来肥料 不作地に実りを 愛知製鋼 量産化目指す

中日新聞 2018.8.20.

トヨタ自動車グループの鉄鋼メーカー(愛知県東海市)が、植物が鉄不足で育ちにくいアルカリ性の土壌を改良する、新しい肥料の開発を進めている。鉄分の吸収を高めるイネ科植物由来の「ムギネ酸」の量産化を目指しており、実現できれば、世界の不毛地帯を耕作地に変え、食糧不足解消への貢献が期待できる。
植物は鉄分を使って葉緑素を作って光合成をするため、土壌に吸収しやすい鉄分があることが成長の鍵となる。ただ、世界の陸地の3割を占める石灰質のアルカリ土壌では、鉄分が十分にあっても、植物が吸収しにくい。イネ科植物が根から分泌するムギネ酸は、土壌の鉄分を包み込み、植物が吸収しやすいような性質に変える特徴を持つ。1970年代に岩手大学名誉教授の故高城成一氏が発見、その後の研究で、アルカリ性土壌でもムギネ酸を肥料にした植物が大きく成長する効果が確認された。
愛知製鋼は、自動車部品を作る特殊鋼の開発で養った技術を応用し、2003年に植物が鉄を吸収しやすくする肥料を国内向けに発売。日本の土壌はほとんどが酸性なのに対し、アルカリ性土壌が多い、海外市場の開拓をにらみ、ムギネ酸の実用化に乗り出した。
ただ、天然のイネ科植物から1キロのムギネ酸を抽出するには、1ヘクタール規模の植物工場が必要で、膨大なコストがかかってしまう。そこで16年からムギネ酸を効率的に有機合成する方法を発見した徳島大学と共同研究を始め、低コスト化を進めている。
現在一般的に使われているアルカリ性土壌向けの鉄分供給剤は微生物に分解されず、環境を汚染する可能性がある。イネ科植物由来のムギネ酸はこうした心配がなく、地球環境への貢献という意味合いも強い。開発を担当する未来創生開発部の野村一衛部長は「全く植物が育たない土壌でも、少量の散布で効果が期待できる。量産方法を確立し、25年ごろの実用化を目指す」と力をこめる。(岸本拓也)