鉄結合タンパクBTSLとそのダイナミックな鉄応答への役割について
鉄結合タンパクBTSLとそのダイナミックな鉄応答への役割について
Iron Binding properties of BTSL proteins and their role in dynamic iron responses
Jorge Rodoriguez-Celma, Lustin M. Bradley, Nick E.Le Brun, Janneke Balk
ISINIP poster presentation 2018 in Taiwan
背景
BRUTUS(BTS)とBRUTS-LIKE(BTSL)タンパクは近年植物における鉄欠乏応答に対する負の制御因子(negative regurators)と紹介されて来ている。BTSLタンパクはBRUTUS(BTS)と高いホモロジーを示すが単子葉植物のそれとは顕著な系統分枝(phylogenic clade)を示す。BTSL1とBTSL2は主に根の表皮細胞と皮相細胞で発現し、根の鉄吸収に関わる遺伝子と共動している。一方、BTSタンパクは葉と根の維管束で発現している。
方法と結果
BTS(L)タンパクのアミノ酸配列を調べると、N-termがわでFe結合に関わると思われるFomoerythrinモチーフをBTSタンパクは3か所(Hr1,Hr2,Hr3)持っているが、BTS(L)はHr2のアミノ酸の一部が置換していた。
このN-term側にマルトースバインデイングタンパク(MBP)を融合したタンパクを合成して大腸菌に導入してタンパクを精製して鉄結合能を調べたところ、鉄分子が
Hr1とHr3のサイトに2つずつ結合していることが分かった。
このことからBTS(L)タンパクは鉄分子を抱え込んで安定的にfoldingすることが分かった。
またRNAseqデータのなかで鉄欠乏応答性の高いBHLH100のプロモーターをルシフェラーゼレポーター遺伝子と接続して(HLHpro:LUC)これをアラビドプシスのwildtype, btsl1btsl2, ts-1の3種類に導入した。3日間鉄欠乏処理したあと、鉄を添加すると、後者の2種類のBtsl変異株では、鉄投与による回復が遅延した。
なわち「BTS(L)タンパクは鉄欠乏応答を迅速にスイッチ・オフするのに必要である。」
ということが分かった。