これは歴史に残る報告書となるだろう
これは歴史に残る報告書となるだろう
「暫定規制値を超過した放射性セシウムを含む米が生産された要因の解析(中間報告) 平成23年12月25日 福島県 農林水産省」
という報告書が、福島県農業総合センターのホームページで開示されている。ホームページの作りが複雑なのでなかなかたどり着けないが、詳しく探していくとここにたどり着けるはずである。
よく読むとこの報告書はデータを多角的に適切に解釈しており、表題にあるように<暫定規制値を超過した放射性セシウムを含む米が生産された要因>について 時点での最良の結論を出していると思う。
そこで、報告書で一番核心とも云える下図を紹介し、多少の解説を加えたい。下図で黒と赤の点線は、小生が囲ったものである。
この図では、玄米規制値である<500Bq/kg以上>の黒い点線で丸く囲った群が、土壌のカリウムの濃度(但し土壌のカリウム濃度0 - 10mgK2O/100g の間だけ)と、多重曲線上に乗っていることを示している。であるから、これらの農家の水田は、土壌のカリウムが低いことが玄米の放射性セシウムを増加させた主要因であると云って間違いないだろう。
しかし、その一方で点線の赤丸で丸く囲った群は、玄米セシウム濃度が<1000Bq/kg 以上>と非常に高いにもかかわらず、土壌のカリウムは極端に低いとは云えない。4つの点が曲線上に乗っていない。
だからこの特殊な4点のコメを生産した農家の栽培条件の解明こそが、今後警戒すべき高濃度玄米生産に関する普遍的な法則性を提供してくれるはずなのである。
農家に対する聞き取り調査と実況見分の結果では、これらの水田は沢水(山からの直接の湧水:脇水)掛かりであるということである。
これまで何回もWINEPブログで述べてきたごとく、特に
(1)出穂期(稲の穂が出る時期)以降登熟期(稲の種子が次第に太って充実してくる時期)を経て完熟期(デンプンが充実しきる時期)に至るまでに、どれだけの雨量があり、
(2)その都度、森林からの湧水の放射性セシウム濃度がどれくらいであったのか、
等が決め手になると思われる。難しく云えば、この微分的な時期が重要なのである。つまり台風などで大雨が到来すると、森林の葉や有機物に蓄積していた可溶性(水に溶けやすい)セシウムが田んぼに流れ込んで、それがもろに、まるで水耕栽培のように、根や茎から吸収されるのではないか、と予想される。
だから福島県は腰を据えて今年はこの4点の田んぼを試験田に指定して、全栽培期間にわたって経時的なデータを採取すれば、きっと高セシウム玄米生産の原因が解明できるだろう。
いずれにしても、膨大な測定を行いその中から、重要な要因解析を導き出した、福島県のこの作業に携わったグループは、表彰ものだと思う。
(森敏 記)