WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
転載希望時は連絡先まで

放射能汚染土壌の除染は無カリウム処理のヒマワリやハゲイトウで行ったらどうか

Date: 2011-03-26 (Sat)


放射能汚染土壌の除染は無カリウム処理のヒマワリやハゲイトウで行ったらどうか

インターネット上で以下の40枚にわたる、研究者にはわかりやすいpdfスライドが上梓されている。

植物への放射性セシウムの集積(タイトル:The Genetics of Radiocaesium Accumulation by Plants. 著者:Philip J Whiteら)。興味のある方はこの英文タイトルでGoogle scholarで検索できる。

この中には多くのセシウム集積植物が紹介されている。(学名なのでここでは紹介しません)

スライドの著者らはイギリスでの「放射性セシウム汚染除去プロジェクト研究グループ」らしく、アラビドプシス(シロイヌナズナ)でセシウムの根からの吸収、地上部への移行に関する遺伝子の研究がなされている。これまでに植物分子生物学上次のことが明らかになっている。(写真1,2,3参照)

1. 培地のカリウム(K+)濃度が高い時にはセシウム(Cs+)はVICCトランスポーターを通して根の細胞内に吸収される。
2. 培地のカリウム濃度が欠乏しているときはセシウムはKUPトランスポーターを通して根の細胞内に吸収される。
3. 植物の地上部のセシウム含量はカリウム含量と強い負の相関にある。
4. 3の現象が起こるゆえんは、セシウムの根から地上部への移行(すなわち導管への分泌)に、カリウムの導管への放出輸送トランスポーターであるKORCを使って、行われているかららしい。

したがって、一般論として最も良い放射性セシウム汚染土壌からの植物によるセシウムの収奪法(ファイトレメデイエーション)とは、放射能汚染農地にN(窒素)とP(リン酸)を入れてもカリウムを絶対施用しないでセシウム集積能の高い植物を生やすことといえよう。

その際何が一番良いセシウム集積植物かという疑問に対しては、日本では以下の先駆的口頭発表がある。

山上睦、小林大輔、?内真須美、久松俊一(2008) 栽培植物からの元素高濃度集積植物の探索 日本土壌肥料学会 2008年度大会9月、於:名古屋市立大

この日本の著者らの、その他のこれまでの多くの口頭発表を整理すると
Cs集積植物は : 栽培植物ではアマランサス(ハゲイトウ)、ヒマワリ、カキチシャ / 野草ではアオゲイトウ、オオイヌタデ
ということである。

今回放射性セシウム汚染土壌の植物による浄化にはやはり、インターネットでの噂のように、種子が大量に入手できるヒマワリなどがよいだろう。

小生の知る限りでは、まだ放射性Srの分析値の新聞発表データがないようだが、今回の福島原発事故では放射性ヨード131や放射性セシウム134,137ばかりでなくストロンチウム89や90も放出されて、土壌汚染しているに違いない。ヒマワリは浅根性で種子が入手しやすく、個体が大きくなるのでストロンチウムとセシウムともよく吸収するようなので、最適かもしれない。これからあたたかい夏に至るので、ヒマワリなら晩秋まで2作できるだろう。


photo
写真1

photo
写真2

photo
写真3