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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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シナプス様顆粒のNPFトランスポーターは鉄と銅の種子への分配を制御する

Date: 2021-09-21 (Tue)

シナプス様顆粒のNPFトランスポーターは鉄と銅の種子への分配を制御する
NPF transporters in synaptic-like vesicles control delivery of iron and copper to seeds

Zhen-Fei Chao, Ya-Ling Wang, Yuan-Yuan Chen, Chu-Ying Zhang , Peng-Yun Wang, Tao Song , Chu-Bin Liu , Qiao-Yan Lv , Mei-Ling Han , Shan-Shan Wang , Jianbing Yan , Ming-Guang Lei, Dai-Yin Chao

Chao et al., Sci. Adv. 2021; 7 : eabh2450 3 September 2021

(要約)

鉄の種子への集積は植物の再生産とヒトの栄養に必須である。
 
鉄の種子への移行のためには、鉄が植物維管束に沈殿することを阻止するために、キレーターであるニコチアナミン(NA)を必要とする。  

しかしNAが金属―NA複合体を形成するためにアポプラストにどのようにして輸送されるのかに関しては未解明である。
  
ここで我々は硝酸/ペプチドトランスポーターファミリーであるNAET1とNAET2が鉄と銅の両者が種子に輸送されるために必要なNAトランスポーターとして働くことを報告する。
  
我々は、NAET1 と NAET2が地上部や根の維管束で主要に発現して、NAを細胞から放出し、それはあたかも動物のシナプス小胞から神経伝達物質が放出される様相に似ていることを示す。
  
これらの発見は植物の膜輸送では異色なメカニズムを明らかにしたものであり、食品栄養とヒトの健康を向上させるために、植物栄養にとって基礎的な展望を拓くものである。
  
  
  
下図の説明
アラビドプシスの金属ホメオスタシスにおけるNAET1と NAET2の作用機序モデル。

(A から Cまで):細胞 (A), 組織 (B), 器官 (C)レベルでのNAET1と NAET2の作用。

細胞質で合成されたNAはNAETタンパクによって分泌顆粒に輸送され、exocytosis によってアポプラズムに分泌されて金属・NA結合体を形成する。
 
根の導管では分泌されたNAとCuやCoとが結合し導管流によって地上部に運ばれる。
  
このFe, Cu, Coなどの金属と結合した金属・NA複合体は地上部の師管のアポプラズムで形成されて師管細胞にYLS1/3によって取り込まれシンク器官に長距離輸送される。
   
赤い矢印は導管流で青い矢印が師管流である。

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