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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄過剰耐性と鉄過剰感受性のイネにおける、鉄過剰誘導性の生理的代謝産物プロファイルの変動

Date: 2020-01-29 (Wed)

鉄過剰耐性と鉄過剰感受性のイネにおける、鉄過剰誘導性の生理的代謝産物プロファイルの変動

Iron toxicity-induced physiological and metabolite profile variations among tolerant and sensitive rice varieties
Turhadi Turhadi , Hamim Hamim , Munif Ghulamahdi , and Miftahudin Miftahudin

PLANT SIGNALING & BEHAVIOR
2019, VOL. 14, NO. 12, e1682829 (12 pages)
https://doi.org/10.1080/15592324.2019.1682829

(要旨)

鉄過剰ストレスはイネやその他の植物にも生理的変化や代謝変化を引き起こす。
これまでに鉄過剰条件下での代謝産物のプロファイルに関する情報は少ない。
実際、代謝産物は植物の生理状態に寄与している。
植物のメタボロミックスとは、ある条件下での低分子量の代謝産物を研究するものである。
本研究の目的はイネの鉄過剰条件下での生理学的代謝変化を調べることである。
いろいろな鉄毒性耐性レベルの4種類のイネ品種を、発芽後2週間経ってから、400 ppm FeSO4 .7H2Oのストレスをかけて10日間水耕栽培した。
様々な生理学的性質を観察し、gas chromatography-mass spectrophotometry (GC-MS)の手法でuntargeted metabolomic analysisを行った。
その結果、イネで、鉄過剰によって生理学的代謝産物の変動が見られた。
対照区に比べて鉄過剰区のイネはelaidic acid, linoleic acid, linolenic acidが鉄過剰に応答する代謝物のマーカー候補であることが分かった。
植物が鉄過剰にさらされると、elaidic acidが増加し、linoleic- と linolenic acidが減少した。
このような、根と地上部における脂肪酸成分の変化は、鉄過剰ストレスに対する耐性戦略の一つと考えられる。
この発見は鉄過剰下における耐性戦略として細胞膜の維持プロセスが関係していることを示唆している。
脂肪酸の生合成にかかわる遺伝子が今後のイネの鉄過剰応答性遺伝子として今後の研究対象になりうるであろう。



(下図の説明)
 
根のelaidic acid (A)、根のlinoleic acid (B)、葉のlinolenic acid(C) 。鉄過剰(400 ppm)区と対照区(0ppm)との比較。バーは標準偏差。IR64, INPAR5, INPAR1, POKKALIは品種名。この順に鉄過剰感受性品種から耐性品種へ。

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