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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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液胞でのphytosiderophore 輸送体は白米への鉄と亜鉛の集積を変化させる

Date: 2019-08-12 (Mon)

液胞でのphytosiderophore 輸送体は白米への鉄と亜鉛の集積を変化させる
   
A vacuolar phytosiderophore transporter alters iron and zinc accumulation in polished rice grains
   
Jing Che, Kengo Yokosho, Naoki Yamaji, and Jian Feng Ma

Downloaded from on August 13, 2019 - Published by www.plantphysiol.org

   
(要旨)
穀粒中の鉄や亜鉛などの必須元素は種子発芽や栄養源として重要である。しかしこれらの元素の種子への集積の分子メカニズムの理解はまだ貧弱である。
近年イネで節位が種子への金属元素の優先的な分配に重要な役割を担っていることが報じられている。
本研究ではイネの節位で高頻度に発現しているOsVMT (VACUOLAR MUGINEIC ACID TRANSPORTER)の機能を特定した。これはa major facilitator superfamilyに属していた.
OsVMTは鉄と亜鉛が高度に集積している節位1の柔細胞 bridgesで強く発現していた。
OsVMT の発現は鉄欠乏の根で誘導されるが地上部の基部や最上階の節位では発現しなかった。
OsVMTタンパクは液胞膜に局在して2’-deoxymugineic acid (DMA)の排出のトランスポーター活性を示した。
栄養成長期ではOsVMT遺伝子破壊株では根の搾汁液ではDMAの含量が減り、3価鉄が増加した。
その結果、この変異株では導管液中のDMA濃度が増加し3価鉄含量が減少した。
白米では変異株は野生株に対して、1.8–2.1倍, 1.5–1.6倍, そして 1.4–1.5倍の鉄、亜鉛、DMAをそれぞれ集積した。
総括すると、OsVMTタンパクはDMAを液胞内に封じ込める。そこで、この遺伝子を破壊すると、節位に集積していた鉄と亜鉛がDMAによって可溶化が促進されて白米への鉄と亜鉛の集積が促進されたと考えられた。


図1の説明。
OsVMT1遺伝子の組織特異的発現。
OsVMTプロモーター・GFPの融合タンパク(B,D,E,G,H)を持つ形質転換イネとネガテイブコントロールとしての野生型イネ(WT:A,C,F)の抗体染色。A-Eが根、F-Hが節位。赤色がGFPタンパクに特異的抗体シグナル。青色が細胞壁の自家蛍光。星印は特殊な背景の細胞壁による自家蛍光との干渉。DとG黄色の四角い斑点はEとHをそれぞれ拡大した領域を示す。節位の拡大した維管束梢(EVBs)、拡大した維管束の導管部分(Xe)、柔細胞橋(?)(PCB)、流動性(?)維管束(DVBs)、拡大した維管束の師管部分(Pe)をそれぞれ示している。
       
図2の説明.
イネのプロトプラストのOsVMPタンパクの細胞内局在。GFPのみとGFPをOsVMPのC末端(E-H)かN−末端(I-L)に融合させたGFPタンパクのシグナル。ポリエチレングライコール法でトランジェントに形質導入した。GFPシグナル(A,E,I)、クロロフィルのイメージ(B,F,J)、明視野(
C,G,K)と融合イメージ(D,H,L)。バーのスケールは10µm。
    
図3の説明。
生殖成長期での野生型イネと2つのvmt変異株の各種組織での鉄と亜鉛の濃度比較。鉄(A)と亜鉛(B)の濃度。白米中の鉄(C)、 亜鉛(D)、 DMA(E) の濃度。野生株と2種類の変異株は、独立のポットで4か月育てた。データは3連の平均値と標準偏差を示す。Tukeyテストでの有意差検定(P<0.05)を異なるアルファベットで示している。

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図1

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図2

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図3