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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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OsHMA3遺伝子を過剰発現させて、カドミウムフリーのインデイカ米を作出した

Date: 2019-07-16 (Tue)

OsHMA3遺伝子を過剰発現させて、カドミウムフリーのインデイカ米を作出した

Producing cadmium-free Indica rice by overexpressing OsHMA3.

Chenni Lu, Lingxiao Zhang, Zhong Tang, Xin-Yuan Huang, Jian Feng Ma, Fang-Jie Zhao

Environment international 126(2019) 619-626


(要約)

中国南部のある地域ではイネの穀粒に高濃度のカドミウム(Cd)を含んでおり一日経口摂取量の危険水準にまで達している。
インデイカ米の品種が中国南部されており、これらの品種は特にCdを種子に高濃度集積する傾向がある。
そこで、インデイカ米への効果的なCd低下の手法が求められている。
液胞へのCdトランスポーターをコードする遺伝子であるOsHMA3をインデイカ米のエリート品種であるZhongjiazao 17にCaMV 35Sプロモーターで駆動して過剰発現させた。
Cdの移行、集積、Cd耐性ばかりでなく農業的形質や微量元素濃度への影響などを評価した。
OsHMA3過剰発現体は根から地上部へのCdの移行を顕著に低下させ、Cd耐性が増加した。
2種類のCd汚染水田土壌に生育させたところ、玄米中のCd含量はちょうど検出限界以下の94−98%にも低下した。
圃場試験でもOsHMA3の過剰発現体は全粒重、亜鉛、鉄、銅、マンガン濃度に有意な影響はなかった。
結論として、OsHMA3過剰発現はインデイカ米において非常に効果的にCd集積を低下させて、ほとんどCdフリーの種子を形成し、収量や必須微量元素含量にも影響がなかった。


(下図の説明)

OsHMA3の過剰発現が玄米中のCd含量に及ぼす影響
野生型イネ(WT)と過剰発現イネの系統(OX-1 and OX-2)を2種類のCd汚染土壌(Changsha, a, c; Qiyang, b, d)で、2017年と2018年に栽培した。値は平均値±標準偏差。星印は有意差(**, P < 0.01; Tukey's test) を示す。



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