WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ホウ素欠乏症に活性酸素分子種(ROS)が関与しているという指摘の論文

Date: 2019-05-10 (Fri)

シロイヌナズナ根がホウ素欠乏処理に迅速に応答するメカニズムの解明

Mechanism underlying rapid responses to boron
deprivation in Arabidopsis roots
Masaru Kobayashi, Maako Miyamoto, Toru Matoh, Sakihito Kitajima, Shigeru Hanano, I Nyoman Sumerta, Takafumi Narise, Hideyuki Suzuki, Nozomu Sakurai & Daisuke Shibata

SOIL SCIENCE AND PLANT NUTRITION, 2018
VOL. 64, NO. 1, 106–115
https://doi.org/10.1080/00380768.2017.1416670

要約
水耕栽培したシロイヌナズナをホウ素を含まない培地に移植すると、1時間以内に根端領域で細胞死が発生する。この迅速な細胞死の背景にある機構を理解するため、関与が推定される細胞機能の阻害剤により、シロイヌナズナのホウ素欠如処理応答が変化するか検討した。その結果、ホウ素欠乏処理時には、細胞膜の伸展及び、機械刺激受容型チャネルからのカルシウムイオン流入が生じ、それをトリガーとして活性酸素分子種が過剰産生されることが示唆された。また、迅速な細胞死は一酸化窒素が関与するプログラム細胞死である可能性も示唆された。RNAシーケンシング解析により、ホウ素欠如処理は病原菌感染応答に類似したトランスクリプトーム変化を誘導することも明らかとなった。これらの知見から、ホウ素欠如処理は細胞壁の構造異常を通じて過敏感反応を誘導すると推定した。(以上、小生が訳すよりも著者自身が翻訳した文章が正確なので、土壌肥料学会誌の日本語抄録から無断転載した)

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ーB処理による迅速な根の細胞崩壊モデル