WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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活性酸素分子種(ROS)の転写制御は根の貫生(proliferation)から分化への転移を制御する

Date: 2019-05-09 (Thu)

(タイトル)
ROSの転写制御は根の貫生(proliferation)から分化への転移を制御する

Transcriptional Regulation of ROS Controls Transition from Proliferation to Differentiation in the Root
Hironaka Tsukagoshi,1 Wolfgang Busch,1 and Philip N. Benfey1,*
DOI 10.1016/j.cell.2010.10.020
   
(要旨)

細胞の慣生と分化へのバランスは多細胞生物の発生のキーとなる局面である。
 
アラビドプシスの根の高度に分解能を有する遺伝子発現データを用いて、我々はこのバランスを調節している転写因子UPBEAT1 (UPB1)を同定した。
 
総ゲノム遺伝子発現プロファイルをChIP-chip分析にかけると、UPB1はまさに分化が始まる細胞慣生領域と細胞伸長領域の境界で活性酸素種(ROS)のバランスを制御する一連のパーオキシダーゼの発現を直接制御していることが明らかになった。
 
UPB1活性を欠失させるとこのROSのバランスが崩れ分化の開始が遅滞する。
 
化学反応試薬によってROSバランスやパーオキシダーゼ活性を調節すると、予想されるUPB1作用と一致するような分化の開始に影響が出る。
 
この経路はオーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンのシグナルと独立して作用している。
 
動物のROSによる-生長制御と比較すると、植物と動物は似たようなメカニズムを使っていることが示唆される。

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UPB1による制御モデル(ホームページから引用)