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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄の負の制御因子としてのヘムエリスリンE3ユビキチンライゲース(Hemerythrin E3 Ubiquitin Ligases)

Date: 2019-03-07 (Thu)

鉄の負の制御因子としてのヘムエリスリンE3ユビキチンライゲース(Hemerythrin E3 Ubiquitin Ligases)

Hemerythrin E3 Ubiquitin Ligases as Negative Regulators of Iron
Homeostasis in Plants

Jorge Rodríguez-Celma, Hsuan Chou, Takanori Kobayashi, Terri A. Long and
Janneke Balk

Frontiers in Plant Science | www.frontiersin.org 1 February 2019 | Volume 10 | Article 98

(要旨)

鉄(Fe)は植物にとって必須栄養素であるが、同時にその酸化還元能は生体細胞内で鉄が危険な毒物であることをも意味している。
 
鉄の吸収、利用、貯蔵の相互の間には、ホメオスタシスは常時維持されなければならない。
  
緑藻類や植物で見出されたユニークな ヘムエリスリンE3ユビキチンライゲース(hemerythrin E3 ubiquitin ligases)という小さな遺伝子ファミリーは、毒性の強い鉄過剰を避けるのに重要な役割を有する鉄ホメオスタシスの負の制御因子(negative regulator)である。
  
タンパク質の相互作用のデータからこのライゲースは26Sプロテアゾーム分解に向けた特異的な転写因子群を標的とすることが分かった。
 
この論文では我々がこれまでに学んできたイネのHRZ (Hemerythrin RING Zinc finger) タンパク、その類縁体であるBTS (BRUTUS)とアラビドプシスでの根特異的BTSL(BRUTUS-LIKE)について論議する。
  
機構モデルを提出して、これらのタンパクの植物の鉄ホメオスタシスにおける制御の役割の完全理解に向けて、将来の研究課題を絞り込む一助としたい。
 
 
以下はFig.1とFig.2の説明です。
  
Fig.1.hemerythrin E3-ligasesの主要な特徴を描いた図式
(A) 植物と藻類のHRZ/BTS/BTSL タンパクの主要な構成要素を動物の類縁タンパク群と比較したもの.BTSLのピンク色のboxはαヘリックス鎖と予想されるhemerythrin (Hr)モチーフの縮退したもので、鉄と結合するべきヒスチジンとグルタミン酸を欠損している.
E3ユビキチンライゲースの領域はCHY-タイプ, CTCHY-タイプ, RING-タイプ、と zincリボン(ZnR)、という異なるzinc フィンガーを含む序列となっている。
(B)  FBXL5のHrタンパクの典型的なαヘリックス構造と2鉄(di-iron)中心 (Fe-O-Fe) (Ruiz and Bruick, 2014による).

   
Fig.2. 鉄欠乏応答に対する負の制御因子(negative regulators)としてのhemerythrin E3 ライゲース.
(A) 鉄ホメオスタシス制御カスケードに統合されるHRZ/BTS/BTSL タンパクの機作.この略号は
アラビドプシスの遺伝子の接頭語をつないで作ったが、カッコ内(HRZ)はイネの相同遺伝子.
BTSLはアラビドプシスでの2つの冗長なタンパクであり、HRZはHRZ1とHRZ2タンパクである
(B) HRZ/BTS/BTSLの細胞内での作用様式.
鉄のレベルがタンパクの翻訳と安定性に影響を与えていると考えられる。タンパクの安定性はさらに自己ユビキチン化活性とプロテアゾーム分解によりコントロールされている.
HRZ/BTSは核に局在することがわかっている.タンパク相互作用のデータからimportin (IMP) a-4がBTSの核への移行を容易にし、その際にhemerythrin (Hr) ドメインが切り離されるようだ.
いったん核に入るとHRZ/BTS/BTSLは特異的な転写因子のユビキチン化を活性化し、次いでプロテアゾームによる分解が起こる.

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