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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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フェリチン遺伝子を操作して、小麦種子の鉄含量を増加させた

Date: 2018-12-04 (Tue)

小麦のフェリチン:小麦の種子の鉄含量を増加させる

Wheat ferritins: Improving the iron content of the wheat grain

Søren Borg a, Henrik Brinch-Pedersen, Birgitte Tauris, Lene Heegaard Madsen, Behrooz Darbani, Shahin Noeparvar Preben Bach Holm

Journal of Cereal Science 56 (2012) 204-213

(要旨)

小麦のフェリチン遺伝子をゲノム上で完璧に位置付けると、近代6倍体品種のゲノムは TaFer1 と TaFer2 という2種類の遺伝子を持っていることがわかった。その各々が3つのホモ対立遺伝子を持っており、染色体の5番と4番に座乗している。

この2種類の遺伝子は異なる制御を受けて発現している。

TaFer1遺伝子は胚乳以外では、鉄とアプシジン酸によって制御されており、もっとも豊富に発現している。

TaFer1のプロモーターはTaFer2とことなり鉄とアプシジン酸応答性シス配列を有しているので、上記の発現データを支持している。

TaFer1遺伝子 と TaFer2遺伝子 は2つの異性体をコードしており、これらはおそらく、作用が異なり、種子中ではフェリチンヘテロポリマーとして作動していると思われる。
小麦の鉄含量を強化することは可能である。TaFer1-A遺伝子を胚乳特異的に過剰発現して種子中の鉄含量を50-80%高めることができた。



(下図の説明)
4種類の遺伝子導入F2世代のFer-03 系統株と野生株【対照区】の、胚乳と胚芽のフェリチン遺伝子発現量。発現量は野生株のTaFer1発現量に対する相対値で表している。内生遺伝子の対照はGADPH とS18。Em:胚芽。En:胚乳

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