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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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アラビドプシスにおける鉄獲得関連遺伝子群のジベレリンによる発現誘導について

Date: 2018-11-03 (Sat)

アラビドプシスにおける鉄獲得関連遺伝子群のジベレリンによる発現誘導について

Gibberellin-Induced Expression of Fe Uptake-Related Genes
in Arabidopsis
Keita Matsuoka, Jun Furukawa, Haniyeh Bidadi, Masashi Asahina, Shinjiro Yamaguchi and Shinobu Satoh,*
Plant Cell Physiol. 55(1): 87–98 (2014)

(要旨)
  
双子葉植物は鉄を根の表皮細胞にあるIRT1(IRONREGULATED TRANSPORTER 1)とFRO2 (FERRIC REDUCTION OXIDASE 2)から獲得している。アラビドプシスではIRT1と FRO2は鉄欠乏条件下で、局所的や全身的シグナルによって遺伝子発現されている。
  
本研究で、IRT1, FRO2, bHLH038 および bHLH39(後者の2つはIRT1とFRO2の遺伝子発現を支配している)が、gibberellin (GA) 欠損変異株 ga3ox1 ga3ox2においてGA4処理で促進されることがわかった。
   
これに対して、鉄欠乏下でIRT1とFRO2の遺伝子誘導に必須である転写因子をコードするFIT遺伝子はGA4を投与しても誘導されなかった。
   
しかし、GA生合成阻害剤であるpaclobutrazol (PBZ)処理で内生GAレベルを低下させたFit-2変異株では、これらの遺伝子の誘導は茎葉部にGA4を投与することで引き金を引かれた。
  
これらの事は、鉄十分条件下でのGAに対する応答にはFITがキーになる制御因子ではないことを示唆している。
  
一方、鉄獲得関連遺伝子群のなかでIRT1, bHLH038, bHLH39らの遺伝子発現はジベレリン生合成経路の二重変異株ga3ox1 ga3ox2では、すべて野生株(WT)よりも低かったが、鉄欠乏条件下ではすべての鉄獲得遺伝子発現は低下していた。
  
かてて加えて、PBZ処理すると、鉄欠乏の野生株においてはIRT1の遺伝子発現が低下したが、fit-2変異株で低下しなかった。
  
これらの結果は、GAが鉄獲得関連遺伝子を発現に寄与する様式は、鉄十分条件下ではFITから独立しており、鉄欠乏条件下ではFITに依存しているのではないかと考えられる。




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鉄獲得遺伝子発現量に及ぼすジベレリンの影響