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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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一酸化窒素(NO)はオーキシンの下流でアラビドプシスの鉄欠乏に応答した根のキレート鉄還元能活性(FCR)の引き金を引く

Date: 2018-11-02 (Fri)

一酸化窒素(NO)はオーキシンの下流でアラビドプシスの鉄欠乏に応答した根のキレート鉄還元能活性(FCR)の引き金を引く

Nitric Oxide Acts Downstream of Auxin to Trigger
Root Ferric-Chelate Reductase Activity in Response to
Iron Deficiency in Arabidopsis
Wei Wei Chen, Jian Li Yang, Cheng Qin, Chong Wei Jin, Ji Hao Mo, Ting Ye, and Shao Jian Zheng
Plant Physiology_, October 2010, Vol. 154, pp. 810–819,


(要旨)

鉄欠乏応答に関して、鉄吸収を促進するために双子葉(dicot)植物は、根の細胞膜にある三価鉄キレート還元活性を誘導する。
  
この傾向は外からオーキシン((α-naphthaleneacetic acid)やNOドナー(S-nitrosoglutathione [GSNO])を与えた場合も活性化されたが、オーキシンの極性輸送阻害剤1-naphthylphthalamic acid や NO消去剤である2-(4-carboxyphenyl)-4,4,5,5-tetramethylimidazoline-1-oxyl-3-oxide, tungstate, or Nv-nitro-L-arginine methyl ester hydrochlorideによって抑制された。
 
一方、鉄欠乏発現条件下では、オーキシン過剰生産株 yuccaでは根のFCR活性、NOレベル、FIT や FRO2 の遺伝子発現は、高かった。しかしこれらは 2-(4-carboxyphenyl)-4,4,5,5-tetramethylimidazoline-1-oxyl-3-oxide treatment の処理で顕著に抑制された。
  
オーキシンが基部に向かう欠損変異株aux1-7では逆の応答が観察されたが、GSNO投与でわずかに回復した。
   
さらに nialと nial2というNOの生合成能が低下している二つの変異株は、鉄欠乏処理やα-naphthaleneacetic acid処理でも鉄欠乏応答を示さなかった。しかしこの2つの変異株では、根のFCR活性はGSNO処理で優位に向上した。
   
オーキシン生産能が向上し、NO集積が減少した二重変異株yucca noa1において、NO発生とFCR活性の誘導が不能になることが確認された。
   
であるから、鉄欠乏下のアラビドプシスではNOがオーキシンの下流に位置してFCR活性を活性化しているというモデルを提出した。



<下図の説明>

アラビドプシスの根では鉄欠乏はオーキシンのレベルを向上し、NO集積を誘導する。この向上したNOシグナルがFITが媒介するFRO2の転写制御を活性化し、FCRを活性化する。その結果、低鉄栄養に応答した鉄集積の増加を招来する。点線の矢印は制御過程を意味する。

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鉄欠乏根におけるNOの作用モデル