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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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4つのIVa bHLH転写因子は、FITと一緒に働く役者で、ジャスモン酸(JA)によるアラビドプシスの鉄獲得阻害を媒介する

Date: 2018-10-03 (Wed)

4つのIVa bHLH転写因子は、FITと一緒に働く役者で、ジャスモン酸(JA)によるアラビドプシスの鉄獲得阻害を媒介する


Four IVa bHLH Transcription Factors are Novel Interactors of FIT and Mediate JA Inhibition of Iron Uptake in Arabidopsis.
Cui Y., Chen C.-L., Cui M., Zhou W.-J.,Wu H.-L., and Ling H.-Q.
Mol. Plant. 11, 1166–1183(2018)
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植物は生き残りのために、鉄(Fe)ホメオスタシスを制御する巧妙な遺伝的なネットワークを進化させてきた。しかし、ジャスモン酸による鉄獲得制御の分子メカニズムはまだ不明である。
   
我々はジャスモン酸がFIT(bHLH29), bHLH38, bHLH39, bHLH100,bHLH101の発現をダウンレギュレートし、かつ、鉄吸収におけるカギとなる調節因子であるFITタンパクの分解を促進することによって、鉄獲得を負(ネガテイブ)に調節していることを見出した。
   
我々はまた、サブグループIVa bHLHタンパクに属するbHLH18, bHLH19, bHLH20, and bHLH25がFITとの新しい共役者であり、ジャスモン酸が誘導するFITタンパクを分解することを示した。これら4つのIVa bHLH遺伝子はジャスモン酸処理によってまず最初に根で発現し、かつジャスモン酸で誘導される。さらに、ジャスモン酸の2つの欠くことができないシグナル伝達経路MYC2 と JAR1が、ジャスモン酸によるFIT とIb bHLH 遺伝子群の発現抑制の伝達に重要な役割を果たしている事、一方では、この二つの成分は鉄欠乏条件下でのFITタンパクの集積を制御するbHLH18, bHLH19, bHLH20, と bHLH25らの遺伝子発現を、互いに異なるやり方で調節している事などを明らかにした。
     
結論として、これらの結果は、bHLH遺伝子群の異なるセットを転写制御することによって、ジャスモン酸シグナルはFITタンパクの分解を促進し、鉄獲得遺伝子IRT1とFRO2の発現を低下させ、鉄欠乏に対する感受性を増加させているということを意味している。我々のデータは、ジャスモン酸存在下では、アラビドプシスの鉄欠乏応答に関しては重層的な阻害が起こっているということを示唆している。
   
   
Key words: iron uptake, jasmonic acid, FIT, IVa bHLH proteins, Ib bHLH proteins
   
        
下図の説明
ジャスモン酸(JA)によるIVa bHLHsを経由した鉄獲得阻害。
鉄欠乏下でFIT と Ib bHLH 遺伝子群 (bHLH38, bHLH39, bHLH100, bHLH101)はアップレギュレイトされる。この4つのIb bHLHタンパクはFITと相互作用し安定化させヘテロダイマーを形成しIRT1とFRO2の発現を誘導し、その結果、環境から鉄の獲得量を増加する。JA存在下ではMYC2がFITとほかの4種類のIbbHLH遺伝子の転写を抑制する。同様にJAに応答する遺伝子bHLH18とbHLH25(これらはMYC2に支配されている)そしてbHLH19 とbHLH20(これらはJAに支配されている)はアップレギュレートされている。これらのタンパクはFITと相互作用して26SプロテアゾームでFITを分解し、鉄獲得遺伝子IRT1とFRO2の遺伝子発現を低下させて環境からの鉄獲得を低下させる。
     
図中の四角は遺伝子を、楕円はタンパクを、JA経由の鉄獲得のダウンレギュレーションの経路はオレンジ色で鉄獲得の制御経路はグリーンで示している。



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