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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ジャスモン酸は鉄欠乏応答性遺伝子の発現を抑制する

Date: 2018-10-02 (Tue)

ジャスモン酸は鉄欠乏応答性遺伝子の発現を抑制する
Suppression of Fe deficiency gene expression by jasmonate
Felix Maurer, Sabine Müller, Petra Bauer*
Plant Physiology and Biochemistry 49 (2011) 530-536
  
(要旨)
鉄欠乏誘導性遺伝子は外部からの鉄の濃度に応答するばかりでなく植物体内でのシグナルにも応答する。植物体内のシグナルとしては、植物ホルモンと、地上部における生理的な鉄の要求と根における局所的な鉄の利用可能性と連携する系統的なシグナルとがある。
   
IRT1(2価鉄イオントランスポーター)とFRO2(3価鉄還元酵素)の遺伝子発現の誘導は植物根での鉄欠乏状況をモニターするのに都合がいい。我々はジャスモン酸の鉄欠乏応答の制御における役割をしらべ、根わけ法も用いた。

ジャスモン酸は鉄欠乏応答において、IRT1 とFRO2の遺伝子発現レベルを抑制したが、発現誘導性までも抑制したわけではない。ジャスモン酸抵抗性変異株jar1-1を用いた解析と、リポキシゲネース阻害剤であるibuprofene投与による解析で、この植物ホルモンの阻害効果が支持された。
   
ジャスモン酸によるIRT1と FRO2遺伝子発現の阻害は作動性制御因子FITを必要としなかった。根わけ法によって調べたところ地上部において鉄を十分に投与した場合に、鉄欠乏応答性の系統的なダウンレギュレーションはibuprofeneや、ジャスモン酸非感受性変異株であるcoi1-1によっても弱められなかった。
      
結論として、根において、ジャスモン酸は鉄欠乏応答反応を微調整(fine-tuning)しているが、鉄欠乏応答反応の系統的なダウンレギュレーションには関与していないといえる。
  
  
図1の説明
ジャスモン酸に応答するIRT1プロモーター制御。pIRT1制御は定量的GUS活性測定で行った。2週間生育したpIRT1:::GUS導入植物を、それぞれ50ppm, 0ppmのFe濃度に、さらに、それぞれを100μM,0μMのジャスモン酸に3週間さらした。根を採取してGUS活性を測定した。



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